世界に類を見ない2ちゃんねるのビジネスモデル

  • スレッドフロート型の掲示板としては「あめぞう」が先駆者であり、2ちゃんねるのはそのスタイルそっくりそのまま流用しただけである。
  • 通常のブラウザで見たときに、デザインというもの全くがなされておらず、長大なスレッドを閲覧するにあたってのユーザビリティーが考慮されていない。専用ブラウザが無いとまともに読めないなど、WEBサイトとしての体をなしていない。
  • そもそも、管理やメンテナンスはひろゆきを含む数名コアの他は、殆どボランティアによって賄われており、時にはソースコードまでもがボランティアによって改訂され、何とか維持されている。
  • その一方で、一般のサイトでは敬遠されるアダルトサイトをスポンサーに持ち、多額の広告収入を得ている。
  • 著作権などくそ食らえ」というスタンスを持ちながら、管理人自身は他人の投稿を元に本を出版し小遣い稼ぎを行っている。
  • 2ちゃんねるでは何を書き込んでも許される、という思い込みをもつユーザーが多く、誹謗中傷や犯罪予告などリアル社会に関わる問題が数多く発生した。
  • さらに、問題書き込みの削除要求に対して管理人が真摯に応じないため、多数の訴訟をかかえている。しかも、管理人がそれに出廷せず、代理人も立てずに敗訴し、損害賠償請求を無視し続けるという、無法状態が発生している。

つまり2ちゃんねるは、コンテンツだけでなくシステム開発や運営までもユーザーにただ乗りし、さらに法廷費用を一切かけず、損害賠償命令も踏み倒してコストダウンを図るという、究極の経営効率を実現しています。
これは、グーグルやアマゾンのさらに先を行く、すごいビジネスモデル(単なる詐欺?)ではないでしょうか。

2ちゃんねるの本質

では、何故このように世界に類を見ないWEBビジネスが日本で発展したのでしょうか?
法律の不備?確かにそれはあるでしょう。また、出てくるタイミングがたまたま良かったという、グーグルなどと同様の運もあります。ネットの世界では意外と先駆者は成功しないので。
しかし、一番の特徴は「金儲けを意識させないショボさ」ではないでしょうか。野暮なデザイン、不安定なシステム、アングラな書き込みなど、いかにも「素人が趣味で作ってます」的な雰囲気をかもし出す事によって、「まさかこのサイトで儲けるつもりは無いだろう」という安心感をユーザーに与えているのだと思います。
また管理者(代表)が、およそ経営者らしくないおぼこい風貌とイマイチ稚拙な語り口で、反社会的なことを言っているのもポイントで、これによりユーザーに「自分たちの仲間」という親近感を与えます。
日本では理路整然と意見を言う人は、あまり受けがよくありません。また、その人の発言内容や能力ではなく「自分たちの仲間かどうか」が重視されます。
スティーブ・ジョブスのように饒舌に明るい未来を語る人はアメリカでは大そう人気ですが、日本ではイマイチで反感を買うことも多いです。
逆に、普段馬鹿ばかりやっているお笑い芸人や、元暴走族のようなタレントがちょこっと良いことを言うと、忽ち心酔してしまう傾向があります。
これは、錯視や営業テクニックなどでも有名な「対比による錯覚」の原理です。つまり、普段馬鹿っぽいが故に、たまに少々賢いことを言うと「おお、すごい!」となってしまう美味しい現象です。ひろゆきはこの原理を上手く利用しようとしているように見えます。

落書きからヤクザへ

また、2ちゃんねるでは、長文や敬語が敬遠されます。以前ひろゆきが「2ちゃんねるで殺伐とした書き込みが多いのは、第3者が見て有益な情報にしたかったから」といっていましたが、これは的外れです。2ちゃんねるほどノイズが多くて、第3者が読みにくい掲示板はありません。
本当の理由は、品の良い(堅い)文章では「便所の落書き」感という基本コンセプトを著しく阻害してしまうからでしょう。同じ理由で、個人を特定するような行為はハンドル名であっても、威張ってるとして嫌われます。その一方で、一般人には意味不明の単語や言い回しを使うことで、仲間意識を高めたりします。

2ちゃんねるは、こうした「反社会」「仲間意識」といった空気によって、実社会で自分の居場所が無いと感じている人たちの間で広がって行ったと考えられます。
こうしたコミュニティーひろゆき唯一神とする宗教団体に喩えることも出来ますが、もっと日本的なヤクザ社会にたとえたほうがしっくり来るような気がします。自分たちの外の社会のルールは守らないが、集団内のルールは厳密でという意味で。また、裏ではえげつない儲け方をしているという意味でも。
そう考えると、ひろゆきが本書の冒頭で「2ちゃんねるを潰すと、もっと厄介な事態になる」と言っていたいのは、「暴力団を取り締まると、地下組織化して、今よりもっと治安が悪くなる」との主張に似ています。