トヨタのウィキノミクス

ウィキノミクスの本質は、中央集権的なマスプロダクションではなく、現場に権限を委譲することにより、彼らの力を最大限発揮させる事とも言えます。その意味では、トヨタの生産方式「カイゼン」の方が遥かに先駆者になります。
トヨタはまた開発の面でも、こうした情報開示と権限委譲をベンダーに対して行ってきました。その結果、デンソーやアイシンと言った超優秀なベンダーを生み出しました。このような技術的にも規模的にも単独で世界市場で通用する強力な企業を、専属の御用聞きのように使えるところがトヨタの競争力の源だと言っても過言ではないでしょう。
ただ、この状況も今は少し変わってきているようで、デンソーなどかパーツをトヨタの言い値で売らなくなったと聞きます。「この値段で不満なら、買わなくても結構ですよ(他社では作れないでしょうから)」という態度に出ているそうです。これは当然、トヨタにとっては大変由々しき事態です。そこで、持ち株比率を上げて発言権を増すという、資本頼みの対抗策に出たようです。
しかし、こうした行為は「技術を囲い込む」ことであり、ウィキノミクスと言う時代の流れに逆行する考え方です。
トヨタは国内だけでなく、北米・欧州・東アジアなど海外にも「トヨタ流」を輸出し、現地の「トヨタマン」を製造し、彼らがまた新たなトヨタマンを作り出すという体制を築きつつあります。
しかし、これまもたマス・コラボレーションと言うより、トヨタ帝国の拡張を行っているだけです。日本人はやはり、自分と同質の仲間を増やすという「大東亜共栄権」的な発想しか出来ないのでしょうか?異質なもの同士がなにげに協力して新たな価値を生む、そういうプロジェクトでインテグレータになれるのは日本人では無くてアメリカ人だとすれば、日本の生きる道は優れたベンダーだと言うことになります。