ボーイング787の挑戦

その意味で私の目に留まったのは、ボーイング787の国際分業の事例でした。とは言え旅客機ほど巨大な構造物ともなれば、沢山のベンダー(部品メーカー)が関わることは当然です。ただ、B787のプロジェクトが画期的なのは「B社からの仕様書が200冊から20冊に減った」というエピソードが示す通り、設計のかなりの部分からベンダー(サプライヤ)に任せた(あるいは巻き込んだ)と言うことです。
従来であれば、部品の細かい部分まででB社が設計・指示することは「航空機メーカー」としての当然の役目であり存在意義であったはずです。ところがB787では、主翼や胴体部分など飛行機にとって本質的な部分の開発を、三菱・川崎・富士などのベンダーに任せて、自分は取り纏め役に徹しました。
これにより、B社は開発費をセーブできる一方で、自社の技術をベンダーに開示する必要があります。これは「肉を切らせて骨を絶つ」的なきわどい作戦にも見えますが、「ノウハウ」部分を秘密にする事で、(何とか?)自社の優位性を保てるそうです。
それにもまして、B社は今回のプロジェクトで「市場調査からコンセプトを決め、それを要求仕様に落とし込む技術」を高め、インテグレーターとしての自信を深めたと言います。
単純に考えて、ある会社が提供する技術の価値と、得られた技術の価値の総和が等しければ、共有した方が得策だと言えます。なぜなら、最終的な製品(この場合はB787)の価値が上がり、それによってもたらされる利益はメンバーに振り分けられるはずだからです。