理想の平等社会

またもや分裂場違い氏が超分かりやすい図でまとめてくれました。
あなたの給料が努力や成果とあまり関係なく決る構造を図解 - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだ
格差議論も行き着くところまで来たという感じです。

国家間、職種間、社内のポジション間の参入障壁がすべてなくなったら、生産性の違いに関係なく、日本人だろうがガーナ人だろうが売春婦だろうが経理のオジサンだろうが会社役員だろうが、国籍、職業、社内の地位による賃金格差は一切なくなります。

まさにこれが僕が考えていた究極の社会です。ようは完璧に市場原理が働くとかえって世の中は平等(結果の平等)になるよということです。競争が貧富の差を生み出すというのは間違いで、実は規制や障壁が既得権益という不平等を生み出しているのですよと。

ところが、分裂氏はこの究極の世界に疑問を呈しています。ポイントは次のようなことでしょう。

  1. まず、彼がいう「能力と表裏一体の障壁」ですが、こういうのを僕は障壁とは呼びません。勿論、医者や高級官僚のように一旦難しい試験をパスすれば、その後はスキルを問われないというのは障壁にあたります。つまり、障壁と呼ぶのは能力に関係のない既得権による障壁です。判りやすいように「理不尽な障壁」とでも言いましょうか。
  2. 次の親の貧富や国の教育投資による障壁は理不尽な障壁と言えるでしょう。ですので、親が貧乏なために高等教育を受けられない子供には国が援助すべきでしょう。ただし、親に援助をしたり、親が貧乏にならないように賃金を均一化したりしてはいけません。
  3. また「リーダーの生産性が高いように見えるのは、その人の能力が高いからではなく、立場上利益を生み出せるのだ」という主張には同意です。したがって、企業トップに(見掛け上)の利益に比例した報酬が払われるのはおかしいと思います。
  4. 最後の、生まれつきの才能や出会いなどの運についてはどうしようもありません。これによる格差は受け入れるべきだと思います。分裂氏は「本人の努力」による格差以外は正当化できないのでは?と考えているようですが、そもそも努力するか否かはその人の才能の結果にすぎません。あることに夢中になれるのは才能があるからです。またそういうのを才能と呼ぶのでしょう。
  5. さらに、予期しきれない社会構造の変動も運と言えるかも知れません。しかし、未来に流行るかも知れない技術を今から習得するなんて運任せはやめて、もっと高い次元での思考能力(ゲシュタルト能力)を身に付けていれば、どのように時代が変化しても対応可能だと思います。

僕の結論としては、2や3のような理不尽な障壁はすべて取り除いた上で、完全な競争原理を導入すべきだということです。よって、理不尽な障壁が残っているという不完全な状態を前提として、競争原理や格差は良くないという議論はピント外れなのです。

再び評価システムの話をします

分裂氏は格差が正当化されない理由としてもうひとつ、評価システムの不完全を挙げています。確かにこれについては非常に悩ましい問題で、僕も明確な答えを持っていないと以前に書きました。しかし、評価システムが不完全だからと言って、評価システムを作ることを完全に諦めてしまってはいけないと思います。
ここで、分裂氏が面白い記事をリファーしていたので、これを基に考えたいと思います。
http://d.hatena.ne.jp/kotorikotoriko/20070214/1171455217
短くまとめると、ほこり集め評価システム導入直後は良いが、最終的にはほこりを会社に提出することが目的化してしまい、ビルが本当に綺麗になったかという観点からは、評価システム導入前と変わらないのではないか、ということだと思います。
僕はこの最終的な状態というのは、かなり極論な感じがします。ほこりのねつ造を監査するシステムを作ったり、窓の綺麗さも評価に加えることで対処できるはずです。これはある意味いたちごっこなのですが、評価システムを日々改良することにより、少なくともシステム導入前よりはビルが全体として綺麗になっているはずです。
逆に、評価システムをやめ(賃金は一律にしておいて)、より良い仕事をしたいという個人の良心に期待するというのはちょっと性善説に立ち過ぎだと思います。平たく言うと社会主義です。もちろんそういう徳のある人もいるでしょうが、それの倍以上の怠ける人が出てくると思います。いや、怠けているだけに留まらず、いかにも働いているように見せるための努力ごっこや忠誠心ごっこが万延するでしょう。さらには、上司(権威)に取り入って既得権益という障壁を作って自らの立場を守ろうとするでしょう。そして、徳があって価値を生み出せる人は埋もれてしまうのです。

結局どうすれば良いのかという主張が無いとむなしい

分裂氏はhttp://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b697e23a80b6602167c2f5e43ebad041に違和感を覚えて、頭書の記事を書いたそうです。
しかし、池田氏の主張の弱点を指摘するのは良いが、じゃあどういう方向に進むべきかという自分の主張が見えない、分裂氏の記事に僕は違和感を覚えます。
例えば、理不尽な障壁は現状のままで良いというのか?あるいは理不尽な障壁は完全に取り払った上で、個人の能力差から生まれる格差はNGとするのか?などが全く見えません。
すべての事はメリットとデメリットの差し引きです。池田氏も小さなデメリットは承知の上で「今の日本に足りないものは市場原理に基づいた流動性だ」と主張しているのだと思います。ですから、分裂氏にもトータル的に究極的にもっともましだと考えるシステムや方向性を示していていただければと勝手に期待しています。